パワハラ防止法は全企業対象へ

ハラスメント

職場での優越的な立場を利用した他社への圧力がかねてより問題になっており、2019年5月に、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律が施行されました。
この法律のことを通称パワハラ防止法と呼びます。

パワハラ防止法ができた背景

この法律ができた背景には日本の高い自殺率やブラック企業の存在、パワハラに関する相談の多さなどがあり、職場環境の改善によって働き方を改革していくことが目的とされています。
当初は大企業のみが対象となっていましたが、2022年4月からは中小企業にも広げられ、すべての企業で防止義務が発生しました。
職場にパワハラが存在すると、環境が悪化し、従業員の労働意欲の低下や離職率の増加によって、事業自体にもマイナスの影響を与えます。
パワハラ防止法を守ることは事業の安定した繁栄にも繋がるのです。

パワハラと教育や指導の線引きは難しい部分がある

しかしパワハラと教育や指導の線引きは難しい部分があります。
ミスしてしまったことに対する注意は必要な指導であり、パワハラだと言われることを恐れるあまり、必要な教育ができなくなってしまうことは避けなくてはなりません。
企業は従業員に正しい知識を与え、どこからどこまでが教育の範囲で、越えてはいけないラインを具体的に示す必要があるのです。
職場環境によって教育の内容は変わりますが、基本的には受け手が教育や指導という枠を超え、圧力を感じるようなことがあった場合はパワハラだと言えます。

パワハラと判断されるもの

パワハラと判断されるものには6つのものがあります。

  • 殴るなどの物理的な暴力や言葉による先進的な攻撃
  • 仲間から外して孤立さること
  • 本人の能力を大幅に超える職務の指示
  • 能力に見合わない仕事を大量に押し付けること
  • 個人の侵害

などです。
無意識にパワハラをしてしまっている可能性もあるので、上司や部下の関係に関わらず、すべての人がパワハラ防止法の内容を理解しなくてはなりません。
特に個人の侵害には携帯の覗き見や個人の情報を他人に暴露すること、プライベートでの交流関係を詮索するなどがあります。
近年では結婚する年齢が遅くなっていることから、比較的年齢の高い層の人は若い人に対して、「結婚はしないのか」などと聞くことがあります。
雑談のつもりで始めた会話だとしても、受け手が不快に感じてしまった場合、この質問はパワハラやセクハラに該当する可能性がでてきます。

企業の職場環境配慮義務について

企業には職場環境配慮義務があります。
社内方針を明確にして周知し、定期的に研修を行ったり、相談窓口などを設置しなくてはなりません。
パワハラが発生した場合は、事実関係を迅速に確認し、指導や隔離など適切な処置を行うとともに、情報提供者のプライバシーの保護が必要です。
パワハラ防止法には罰則規定がありませんので、直接会社が処罰されることはありません。
しかし被害者が民事で裁判を行えば、加害者だけでなく会社側も義務違反で訴えられる可能性があります。
裁判に負ければ慰謝料を請求されることになりますし、問題の内容次第では厚生労働省から勧告を受けたり、SNSやニュースなどで社名が公表されてしまう可能性も出てくるでしょう。
社会でのイメージが大幅にダウンすることによって不買につながったり、人を募集してもなかなか人材が集まりにくくなる、離職率が上昇するなど、長期的に見ると事業の継続にダメージを与える事案に発展する可能性もあります。
こうしたことにならないよう、職場でパワハラが発生しない、発生しても大事になる前に問題を解決できるフローを作っていくようにしましょう。

まとめ

中小企業などで相談窓口を設置するのが難しいケースは、社外弁護士に依頼するなどの方法で対策を講じることも可能です。
企業の大小にかかわらず、職場はパワハラのない環境にしていく努力が必要で、そのためには労働者1人1人の意識改革が必要です。